目の前の幸せから逃げないで

年末の休みに 光毅は 自分のアパートを 引き払った。

帰らない部屋の 家賃を払い続けるのは もったいないから。


「由紀乃さん、いいの?」

「うん。駄目って言っても、みつき 帰らないでしょう?」

「それは…でも、由紀乃さんが 迷惑なら…」


否定してほしそうな 縋るような目で 私を見る光毅。

「迷惑じゃないわ。私も みつきと 一緒にいたいから…」

光毅が 可愛くて。

いけないと 思いながらも 私は、

光毅が 欲しがる言葉を 言ってしまう。


「ありがとう、由紀乃さん。俺、色々 手伝うからね。」

光毅を 喜ばすことが 私の喜びに なっていく。


お正月は、近くの神社に 初詣に行った。

「何、お願いしたの?」

私よりも長く 手を合わせていた光毅。

私が 聞くと

「秘密。由紀乃さんは?」

と聞き返す。


「私は、商売繁盛でしょう。一応、社長だから。」

「それだけ?」

「フフッ。私も、ひみつ。」

そう言って 光毅の腕を取り 歩き出す。


この幸せが 続きますようにって。

それ以外 何を 願えばいいの?


私には、光毅を 縛ることはできない。

今は 私に夢中の 光毅だけど。


いつか 光毅は 私に 飽きるだろう。

その時は 快く 光毅を 送り出してあげよう。

私は 光毅より 12才も 年上だから。


一緒の時間が 幸せなほど 切なくなってしまう。

覚悟して 始めた ことなのに。

私は 完全に 光毅に恋していた。


どうして私 悲しい恋ばかり してしまうんだろう。








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