目の前の幸せから逃げないで

クリスマスに 私は ケーキとローストチキンを 手作りした。

光毅は 驚きと喜びで 上気しながら 私を 抱き締めた。


「由紀乃さん、メリークリスマス。」

そう言って 光毅は 小さな包みを 差し出す。

「なあに?」

「開けてみて。」

真っ赤な 革の手袋。

「わぁ、素敵。ありがとう。いつ 買いに行ったの?」

私は 不覚にも 涙汲んでしまう。


「学校の帰りに。隠すのに 苦労したよ。」

得意気な 光毅に 私からのプレゼントは 腕時計。

「こんな高いもの、いいの?」

「いいのよ。みつきのおかげで、売り上げ 伸びているから。」

「ありがとう。」

嬉しそうに 受け取る光毅。

二人の 初めての クリスマス。


甘くて 幸せで。

夜は 熱くて。


光毅に 与えられる快感は どんどん 強くなって 私を 困らせていた。

それが 光毅の自信になり 更に 私を翻弄した。








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