目の前の幸せから逃げないで

光毅と 暮らす 甘い毎日。

いつまでも ずっと 一緒にいたいけど。

私は 自分の中で 期限を決めていた。

光毅が 大学生の間だけ。

そうしないと 光毅を失った後で 

自分が 壊れてしまいそうだから。


でも、いくら 覚悟を 決めていても 

光毅を失った時 私は 平静では いられないと思う。


光毅と暮らして まもなく半年。

ほとんど 一日中 一緒にいるけど。

何も 不満なんて ないから。


話していても、黙っていても。
 
二人で 何かをしていても。

別々のことを していても。


光毅と 一緒の時間に 不快な思いを することはなくて。

同じ空間に いるだけで 幸せな人なんて

今まで 一人も いなかった。


光毅は 就職のことを 何も 言わない。

就活している 気配はないし。

スーツを着て 出かけたこともない。


私は 光毅が 就活していないと 思っていたけど。

もしかしたら もう 決まっているのかもしれない。


光毅が 就職したら 私達の関係は 終わる。

今は 光毅の世界が 狭いから。

だから 私と 一緒にいるけど。

光毅の世界が 広がれば。

光毅に相応しい 若い恋人が できるだろう。

そうしたら私は 身を 退くしかない。


本当は 光毅の就職が 私は 怖かった。

肝心なことに 触れなければ 

私と光毅の 日常は 穏やかだから。


一日中 一緒に 居られるから。


臆病な私は 難題を 先送りにするように

光毅に 就職のことを 聞かない。


だって、本当は私 光毅を 失いたくないから。








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