目の前の幸せから逃げないで

連休明けから 時々 鈴香は リモートで 仕事に参加した。

一時間くらいの 短い打合せだけど、

思いがけない 提案があったりして 新鮮だった。


「あれ。ハタ君、何か 大人っぽく なったんじゃない?」

鈴香に言われて サーッと 頬を染める光毅。


私は 鈴香を警戒して 表情を硬くした。

出勤したら 鈴香は きっと 私と光毅のことに 気付くだろう。

光毅は 二人のことを 隠さないから。


鈴香は 絶対 呆れる。

やっと 辛い不倫を 辞めた私。

今度は 若い大学生と 付き合っているなんて。


二人が 付き合っていることを 私が隠すと

光毅は 不満そうにするけど。

でもいつか 光毅の方が 隠したいと 思う日が来る。


「あー。紗良ちゃん、起きちゃった。」

打合せを始めて 一時間くらい経った時

紗良ちゃんの 泣き声が聞こえた。

「はい、はい。紗良ちゃん、起っきしたの。」

画面から消えた 鈴香の 優しい声が 聞こえてくる。

「由紀乃、ごめん。明日、続きしようね。」

紗良ちゃんを 抱いた鈴香は そう言って ZOOMを切った。









< 33 / 51 >

この作品をシェア

pagetop