目の前の幸せから逃げないで

「もしかして 由紀乃。清原さんと自分に 置き換えてない?由紀乃とハタ君を。」

「そうよ。私 清原さんのこと 好きだと思っていたけど。ある時、パッと 醒めたから。みつきも あの時の私みたいに パッと 醒めるんじゃないか…怖いのよ。」

「清原さんにとって 由紀乃って ただの遊びだったんだよ。家庭は 壊さないで 若い由紀乃を 摘まみ食い しただけだったの。由紀乃は それに 気づいたんじゃない。だから 醒めたんでしょう。今の由紀乃は ハタ君のこと 本気でしょう。だったら 大丈夫よ。」

「鈴香 本当にそう思う?」

「思うわ。」

「ちょっと起業して 成功したからって いい気になって 若い男の子に 手を出している 中年女だと思わない?私のこと。」

「ハハハッ。何よ、それ。」


「私が そんな風に 見られることは 構わないんだけど。みつきが そんな女に 騙されている 可哀そうな 大学生って 思われるのが 嫌なの。」

「そんなに 好きなら 大丈夫。いいじゃない、ウチで 雇ってあげようよ。それで、ガンガン働かせて。売り上げ もっと 伸ばしてもらおうよ、ノルマとか与えて。」

「やだ、鈴香。急に どうしたのよ。」


「だって 由紀乃が デレデレ してるから。私が 厳しくしようと 思って。ねぇ、ハタ君の どんなところがいいの?由紀乃とハタ君って 意外過ぎて 想像できないのよ。」

「そうね…気づいたら そうなっていたから。どこがいいって 言われても…」

「でも、まもなく 一年でしょう。一緒に暮らして。それで そんなに 好きなんて。相当 良い所が あるんじゃないの?」

「うーん…自然なの。一緒にいて。疲れないし。それがいいのかな。」

「へぇ。まぁ 職場では イチャイチャ しないでよね。」

「当たり前でしょう。私だって もう いい年なんだから。」


鈴香と話したことで 私は 決心できた。

本当は もう 決心していたんだけど。

誰かに 後押しして ほしかっただけなのかもしれない。






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