目の前の幸せから逃げないで
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鈴香の家から 戻った私を 

光毅は 何か聞きたそうに 見つめた。


「みつき 今日は 早く上がろうか。急ぎの仕事 ある?」

「ううん、大丈夫です。由紀乃さん いない時 集中してたから。」

「そう。じゃ、夕食は デリバリー頼んで ゆっくり話そうか。」

「はい…」


家に帰ったら もう一度 光毅の気持ちを ちゃんと聞こう。

私達は 珍しく 定時に 事務所を閉めて 家に向かった。


光毅が好きな 中華のデリバリーで 夕食を終えて。

私は そのまま ダイニングテーブルで 向き合う。


「あのね。今日、鈴香と 話してきたんだけど。みつき、本当に ウチで 働いてくれるの?」

「俺は そうしたいと思っているけど。いい?」

「うん。お願いします。」


「良かった。どうしても駄目って 言われたら コンビニのバイトでも しようと思っていたんだ。」

「そんな…その時は ちゃんとした会社 探せばいいじゃない?」


「ううん。バイトしながら 由紀乃さんの 気が変わるのを 待つつもりだったから。」

「みつき…ありがとう。」

「こちらこそ。よろしくお願いします。」


「お給料は 大手ほど 払えないけど いい?」

「お給料なんて いらないくらいだよ。今だって 由紀乃さんに 面倒見てもらっていて。生活費 全然 使ってないのに。」

「そんなこと いいのよ。でも 仕事の 業績が上がれば お給料は 増やしてあげられるからね。」

「だから…お金じゃないの。俺は 由紀乃さんと一緒に 仕事が したいだけだから。」


光毅は どうしてこんなに 私を慕ってくれるのだろう。

贅沢は しないし、物欲もない光毅。

外出も 好きじゃないから お金を使う所がないけど。

地位や名誉が 欲しくないのだろうか。







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