スパダリの秘密〜私の恋人はどこか抜けている〜
 おそるおそる尋ねると、慶汰は「さあ、有紗次第」と涼しい顔をする。その言葉に有紗はますます不安を募らせた。

「私次第って――」
「俺がバカになるほど有紗を好きすぎる話」
「はい……?」

(慶汰さんがバカになる……?)

「俺も必死なんだよ、有紗に振られないように。余裕なんてないさ。常に有紗の理想の男でいる方法ばかり考えてる」
「……どういうこと?」

 つい先ほどまでは慶汰も隠しておくつもりだったが、あまりに有紗が可愛いことを言ってくれるので変な小芝居はやめようと決めたのだ。

 有紗のために私生活では抜けている自分を演じていたこと、けれどだらしない男は嫌いだと言うから、ここ最近は本来の自分を出していたこと――慶汰がわざわざ演じてきた姿を種明かしをしていくと、きょとんとしていた有紗の顔はどんどん曇っていく。

「まって、なにそれ……全部わざとだったってこと? 料理できないのも、朝起きれないのも」
「料理はわりと得意なほうだし、朝寝坊したことなんてない」
「卵の黄身割れてた……」
「それはわざと」

 卵料理を作るたびに割れるなんて、そこまで不器用な人はそうそういないと慶汰は笑みをこぼした。

(毎回割ってる人のほうがいないでしょ……)

 突っ込みたいけれど、話が想像の斜め上を行き過ぎていて、開いた口が塞がらない。

「じゃぁネクタイ結べないのは?」
「何年も社会人やってて、結べないわけないだろ。有紗と付き合う前は一人でやってたわけだし。ただ有紗に結んでほしかっただけ」

 悪びれる様子もなく、慶汰がひとつひとつ真実を明らかにする。有紗はすべてを理解したあとで深く項垂れた。

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