俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する
「ごめん、道が混んでて遅くなった。大丈夫だったか?」
振り返ると、翔さんがいた。

「忙しいのにお迎えに来て頂いて、ありがとうございます。」
慌ててスケッチブックを片付けカバンに入れる。
「気にしなくていい。俺が会いたかったんだ。」
そう言って翔さんは私のバックを肩にかけ歩き出す。

「あの、荷物は自分で持ちますよ。」
バックを持とうと歩み寄ると、手を握られてそのままエレベーターの方へと引っ張られる。
「慣れない着物で疲れただろ?
あんまり連れ回すのも可哀想だと思って、
このホテルの最上階のレストランにした。
会場じゃ、あまり食べられ無かっただろ?
お腹は空いてる?」

「はい、美味しそうだったんですけど…お腹ペコペコです。」

翔さんはフッと笑ってやっと振り返ってくれた。目線が合い、優しくポンポンしてくれる。
優しい笑顔で安心する。

「待ってる間、誰かに声をかけられなかったか?」
実はロビーに入るなり、何人かの男が果穂に目を向けていた事に気付いたから、翔は心配になり聞いてしまう。

「大丈夫です。私みたいなお子様は誰も相手にしませんよ。」
その無自覚なところが辛い。翔はそう思い、果穂の兄の苦労が目に浮かぶ。
そして尊敬すら覚える。
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