本当の恋とは言えなくて
結局最後のお迎えは7時半頃で保育室の掃除や消毒などしていたら保育園を閉めて帰るのは8時過ぎていた。

ビルを出ると真っ暗になっていた。肌寒さに少し震える。

ふと向かい側のホテルを見る。高級感溢れる佇まいのエントランスに駒山さんが立っていた。背が高くスタイルが良い上にどことなく色気のある美しい顔立ち。それだけで目を引くのに、要人といった雰囲気を漂わせている老齢の外国人ご夫妻に向けるその笑顔は目が離せないほどとても綺麗だった。通訳らしき人もおらず和やかに話しているだろうその言葉は恐らく外国語…。

(ハイスペック過ぎて映画の中の人みたい…)
そう思うとふと寂しくなる。

でも…!あんな笑顔ができるんじゃない!何で私にはずっと仏頂面なのよ!! だんだん腹が立ってきた。

そうすると『もうやめた方が良いですよ。あなたみたいな人があんなに暗い公園の中を歩くのは。』と言った彼の言葉が頭をよぎり

「ハイハイ。私なんかはさっさと明るい道を歩いて帰りますよ!」
独り言をつぶやいてちょっとプリプリしながら駅に向かって歩いた。

< 6 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop