Better late than never〜失った恋だけど、もう一度あなたに恋してもいいですか?〜
「今日は引き受けてくれてありがとうございます」
「いえ……父の会社に関する大事な調査なんですよね? それなら協力するのは義務ですから。それで……具体的に私は何をすれば良いのでしょうか。このままだと本当に立ってるだけになってしまいます」

 すると誠吾は真面目な顔になり、ロビーを行き交う人々の姿に目を凝らす。その中には二人が知っている顔もあり、これからパーティーへと足を運ぶに違いなかった。

「……ある程度の証拠は固めましたからね。あとはその人物が妙な動きを見せる前に、ボロを出すのを確実な証拠として収めたいんです」

 そう言うと、さりげなくジャケットの胸ポケットを芹香にだけ見えるように開くと、そこにはスティック型のレコーダーが見えた。

「あなたには危険が及ばないよう、細心の注意を払いますから安心してください」

 芹香はゴクリと唾を飲む。もっと簡単な案件だと思っていたが、父も動いていることだし、芹香が思っているよりも大きな事件なのかもしれない。

「明智さんが関わっているので、セキュリティ関連の問題かと思っていたのですが、そうではないんですか?」

 彼が立ち上げたのはセキュリティ会社だからこそ、そう思うのは自然な流れだったが、今の彼の話を聞く限りそれだけではないように思えた。

「もちろん、そのことも大事な仕事です。でも今回は少し複雑な事情があるんです」

 それ以上は話してくれないのね──そう思うと複雑な心境ではあったが、父の会社のためにも誠吾に協力しなければならないと決心もつく。

「わかりました。私は役目を(まっと)うします」
「はい。そのためにも、決して私のそばから離れないようにしてくださいね」
「……わかりました」

 その時、彼の手が頭を優しく撫でたものだから、芹香は驚いて大きく飛び退いた。

「い、いきなりなんですか!」
「あぁ、すみません。つい昔の癖が出てしまいました」
「一体いつの話ですか……もうそんな歳じゃないって言ったはずです」
「これは失礼しました」

 頬が真っ赤になったことを悟られないよう、ぷいっと顔を背けたが、誠吾がクスクスと笑う声が聞こえて恥ずかしくなった。
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