Better late than never〜失った恋だけど、もう一度あなたに恋してもいいですか?〜
「これは……?」
「今回ご協力をいただくことへの、少しばかりですがお礼です」

 誠吾の優しい笑顔に心を乱されながら、芹香は受け取った小箱をそっと開ける。すると中には立体的なゴールドのバラの中にピンク色の石があしらわれたネックレスが入っており、キラキラと輝きを放っていた。

「可愛い……」

 芹香の心を鷲掴みにしたデザインに、思わず笑みが漏れる。

「やっと笑顔を見せてくれましたね」

 その瞬間、ハッとして唇を噛んだ。隙を見せてしまった自分自身に苛立ちを覚え、咄嗟に彼に背を向けた。
 
「貸してください」

 誠吾は芹香の手からネックレスを取ると、背後から芹香の首元に手を伸ばす。

「えっ……あの……!」

 首筋に吹きかかる誠吾の息遣いと素肌に触れる彼の手の温かさに、芹香の身体中がゾワゾワと震えた。

「芹香さんがネックレスをつけていなかったのは好都合だったな」
「……襟元にパールの飾りが付いていたからいらないかと思って……」
「こっちを向いて」

 突然敬語が消えた誠吾の口調に戸惑いながら、ゆっくり彼の方へと向きを変える。すると誠吾の視線が真っ直ぐに芹香を捉えていたので、息が止まりそうになった。

「うん、よく似合ってる。良かった」
「あ、ありがとうございます……。でも、私はただそばにいるだけなのにこんな素敵なものをもらうなんて……」
「いいんです。是非受け取ってください」

 どうしてそんなふうに優しくするの……放っておいて欲しいのに……今もこんなに嬉しくなるのが悲しいかった。
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