Better late than never〜失った恋だけど、もう一度あなたに恋してもいいですか?〜
 どう思われただろう。馬鹿なことをしてと幻滅されたかもしれない。

「芹香さん」

 名前を呼ばれ、怖くて体が震える。次の言葉を聞くのがこんなにも不安になるなんて思わなかった。

「芹香さん、どうしますか? ここまででやめておきますか? それとも続ける?」
「えっ……」

 想定外の言葉が返ってきたため、芹香の頭は混乱した。慌てて誠吾の顔を見つめると、真剣な眼差しの中に熱いものが垣間見えた。

 明智さんが私を求めてくれてる……そう思っていいの? だとしてもこんなことを願うのはおかしいってわかってる。なのに気持ちを抑えられないの……芹香は唇を噛み締める。

「……もしも許されるのなら、このまま続けてほしい……」

 彼の心を手に入れられなくても、たった一度でも愛された記憶が残ればそれだけでいい。

 芹香の言葉を聞いた誠吾は、ポケットからスマホを取り出して誰かに電話をかける。

「あぁ、私です。先ほど芹香さんが襲われました……えぇ、とうとう動き出したようです。芹香さんが相当ショックを受けているので、とりあえず私が取っておいた部屋の方で休ませますから、そちらの方は頼みましたよ」

 きっと電話の相手は秀之だろう。これで二人がいなくなったことを疑う人間はいないはずだ。

 一気に緊張感に包まれ、喉がカラカラになる。心臓が早鐘のように打ち付けていくのがわかった。

「明智さんの嘘つき……」

 すると誠吾は芹香の体を軽々と抱き上げると、寝室のベッドにそっと寝かせる。そして指先で芹香の唇をなぞりながら眼鏡を外してサイドテーブルに置くと、反対の手で自身のシャツのボタンを外していく。

「黙って……これから聞こえる声は違うものを望むよ」

 そして再び唇を塞ぐと、何度も深くて甘いキスを降らせた。
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