Better late than never〜失った恋だけど、もう一度あなたに恋してもいいですか?〜

6 新しい策

 バスルームで身支度を整えた芹香が部屋に戻ると、ソファに座っていた誠吾に手招きをされる。彼にそんな仕草をすることにギャップを感じて、思わず心臓が高鳴った。

 ぎこちない歩き方で彼の隣に座ったが、誠吾からは先ほどまでの甘い雰囲気とは違い、真剣な眼差しを感じる。

 そのことから、彼がこれから大事な話をするのだろうと予測がついた。

「昨夜のことですか?」

 芹香が尋ねると、誠吾は一瞬驚いたような顔をしたが、黙って頷いた。

「あんなことがあったので、これ以上芹香さんに秘密にする必要はないと、社長とも話して判断しました」

 きっと芹香が身支度をしている間に連絡を取り合ったのだろう。これで秘密はないのだと思うと、不思議と安心出来た。

「あなたを襲った人物は、五年前と同一犯であると考えられます」

 表向きは犯人が捕まったことになっている。今の誠吾の口ぶりからすれば、彼の言う犯人とは黒幕のことだとわかる。

「……黒幕……ですね?」
「えぇ、そうです。前回は実行犯を雇っていたこともあるので、昨夜あなたを襲ったのも、もしかしたら雇われた人間という線も捨てきれません」

 黒幕本人が芹香を襲ったのか否か、これについては証拠もないため、断定することは出来ないのだろう。

 ただ芹香の中で新たな疑問が湧いてくる。

「あの、でも……どうして私なんですか?」
「様々な理由が考えられますが、一番は"一度成功している"という点ではないでしょうか。普通は同じことを二度繰り返せば足がつくと考えますが、この犯人はそれほど素人だということです。今回も成功するだろうと勝手に予測しているように思われます」
「相当自信があるんですね。でも……明智さんたちは何故また私が狙われるとわかったのですか?」

 それが謎だった。この創業記念パーティーが開催されるということは、前々から告知はされていた。しかし昨日は、芹香が狙われることを前提として誠吾が配置されたのだ。その行動に至る何かがあったはずだと芹香は考えた。
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