Better late than never〜失った恋だけど、もう一度あなたに恋してもいいですか?〜

4 迫り来る者

 身支度を整えてから、誠吾は芹香をソファに座らせた。先ほどまでの甘い雰囲気とは違い、真剣な眼差しで芹香を見ている。

「昨夜のことですね?」

 芹香が尋ねると、誠吾は黙って頷いた。

「あなたを襲った人物は、五年前と同一犯であると考えられます」
「……黒幕……ということですか?」
「えぇ、そうです。ただ前回は実行犯を雇っていたこともあるので、今回もその線は捨てきれない」
「でも……どうして私なんですか?」
「様々な理由が考えられますが、一番は"一度成功している"という点ではないでしょうか。普通は同じことを二度繰り返せば足がつくと考えますが、それほど素人だということです」「ということは、今回も私が狙われていた……」
「……秀之があなたの机の下のコンセントに盗聴器が仕掛けられていたことに気付いたんです」

 確かに兄はあの事件以降、警戒心が人一倍強くなった。家も社内も、定期的に見て回っている。だから見つけたとしても何ら不思議はなかった。

「つまり……昨夜のパーティーは、本当は明智さんが私のボディーガードのようなものだったんですね」
「そうなります。失敗しましたが……」
「……明智さんは犯人の目星がついているんですか?」

 口を閉ざしたということは、無言の肯定。

「……誰なんですか? 教えてください」
「ダメです。あなたに危険が及ぶ可能性がある。それに私は警官ではないし、これが真実かはまだわからないんです」
「何言ってるんですか。もう既に襲われているんですよ。それなら逆に身を守るためにも真実を知る必要があると思います」

 それは芹香の強い意志だった。もう除け者にはされたくない。私だって同じことを共有したいの。それに昨日は明智さんが来てくれたとはいえ、私だって必死に抵抗した。非力でも戦う力がないわけじゃない。

 芹香の決意を感じ取ったのか、誠吾はため息をついてから心配そうに彼女の頬に手を添える。今までになかった彼からの愛情を感じ、芹香の胸が熱くなっていく。誠吾の手に自分の手を重ねると、更に温もりを強く感じられた。

「……明智さんがその結果に至るまで、きっと多くの調査をしてきたはずでしょう? その上で出した結論なら、私は信じます。だから教えてください」

 誠吾はしばらく黙ったまま考え込む。それから目を閉ざすと、小さな声で呟いた。

「副社長です」

 芹香は驚きのあまり目を見開き、そして唇を噛んだ。
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