Better late than never〜失った恋だけど、もう一度あなたに恋してもいいですか?〜
「昨夜の様子を見る限り、犯人は相当切羽詰まっているように思われます。ですが今の状態だと、芹香さんが一人になるタイミングもかなりありますよね。仕事中や昼食は誰かと一緒に過ごすことは可能ですが、例えば通勤や帰宅時間は社長や秀行とは別になることが多い」
「確かに……芹香はタクシーを使ってくれないから」
「だってもったいないし……」
「大事な時くらい、使ったらどうだい?」
「うん、そうだね……」

 眉間に皺を寄せて、困ったように返事をした時だった。

「もしよろしければ、私に彼女の送迎をやらせてもらえませんか?」
「明智くんが? でも君だって忙しいだろうに……」
「私は元々、今の会社では裏方業務なんです。なので比較的時間を取りやすいので、時間を合わせることは可能です。それに誰かと一緒にいれば、相手への牽制にもなりますし」
「牽制?」
「えぇ、例えばですが、芹香さんに付き合っている男がいるとわかれば、相手も容易に手が出せなくなると思うんです」
「確かに……いずれは家を出ることになる芹香に、もし付き合っている男がいるのなら、計画を早めたいと思うのは当然の心理かもしれませんね」
「でもそのタイミングすら誰かがそばにいれば、事を起こすのは無理でしょう」

 誠吾の言葉には説得力があり、父親と兄も納得したように頷く。だが芹香は、彼と付き合うことになったと報告をしていないため、気が気ではなかった。

「つまり、明智さんに恋人のフリをしてもらう、ということですね」
「えぇ、もし犯人が副社長と太一さんであるのなら、迂闊に手は出せないでしょう。そしてその間に証拠を固め、これ以上芹香さんに手が出せないよう警察に突き出すことも考えておいてください」

 父親は神妙な顔で頷くと、芹香の方に向き直る。

「芹香を危険に晒してしまうようで心苦しいのが、明智くんのいう通りにしようと思う。いいかな?」
「もちろんよ。何事もなく終わるといいけど……」
「あぁ、それを願おう」
「では明智くん、今日から芹香をお願いしてもいいかな?」
「ええ、しっかりと送迎をさせていただきます」
「よろしく頼むよ」

 そう言うと、二人は出勤のため先に家を出た。残された芹香と誠吾は、芹香が身支度を整えてから家を出た。
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