Better late than never〜失った恋だけど、もう一度あなたに恋してもいいですか?〜
* * * *

 おかしいという感覚はあった。しかし二人を呼びにきたのが一般の社員であったこと、社長室が目と鼻の先であることで油断してしまったのかもしれない。

 誠吾と秀之は至急社長室に来るようにという言葉の通り、急いで社長室に向かった。しかし中には誰もおらず、その瞬間二人は嵌められたことに気付いたのだ。

「芹香さんは⁈」

 慌てて芹香がいるはずの秘書室へ走ったが、部屋の中は明かりがつき、芹香のパソコンは開かれたまま、荷物も置きっぱなしになっている。争った形跡はなく、芹香だけが忽然と消えていたのだ。

「芹香は……? 明智さん! 芹香は⁈ まさか連れ去られた……⁈」

 誠吾は部屋を飛び出すとエレベーターホールまで走る。しかしエレベーターは地下駐車場で止まっていた。ボタンを押して到着するまでの時間、頭をフルに回転させていく。

 出入口は一つ、ずっと潜伏していたとは考えにくい。ではあの短時間で誰かが入り込んだということになる。しかし私たちを呼び出してから芹香さんを連れ去るには、あまりにも短時間でタイミングが良すぎる──つまり共犯がいなければ成り立たないのだ。

 エレベーターが到着して乗り込むと同時に、誠吾はスマホを取り出し電話をかける。

『はいはい、どうした?』
「あの男と息子のスマホのGPSを追ってください」
『了解。すぐに調べるよ。というか、珍しく切羽詰まってるんだな』
「えぇ、芹香さんが連れ去られました。今回の犯行を見る限り、顔見知りである可能性が高い。つまり……」
『はい、出た! 二人とも同じ位置にいるから、たぶん一緒に行動してる。明智のスマホに位置情報を送っておいた』
「ありがとうございます」

 通話を切り、送られてきた情報を確認している間に、エレベーターは地下駐車場へ到着する。

「今の電話は……」
「共同経営者です。ちょっと手伝ってもらいました」

 秀之に相談を受けてから、彼らの行動を観察してきた誠吾には、地図が動いていく方面に見覚えがあった。

「この方面は確か……」

 これは賭けに近いかもしれない。でも誠吾の中では確信めいた何かがあった。誠吾は秀之の方へ向き直る。

「社長に電話をしてください。今は社長の力が必要です」

 誠吾の自信に満ちた表情を見た秀之は大きく頷くと、すぐに父親へと電話をかけた。
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