大好きだよ、堕天使くん
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もふもふのカーペットに黒い革のソファの上に寝そべるかわいい女の子。
ラベンダーの香りが部屋の中に充満しているが、灰皿に入っている何本ものタバコの匂いを誤魔化すことはできていない。
「沢鷹さん、どいて」
「待って」
某レースゲームに夢中になっていると、横からため息が聞こえてくる。
コンピューターは弱っちいから、直ぐに試合が終わることをわかっているのだろう。
そうでなければ、私を蹴飛ばしてでもこの場所を自分のものにするはずだ。
「いぇい、1位!」
「はいはい。どいて」
「はーい」
足を毛虫のように動かしてソファの端へ寄る。
空いた隙間に堂々と、堕天使くんは腰かけた。
「えー、タバコ吸うの?」
「吸わないよ」
「あ、私のため?」
肝心の説明に答えることなく、堕天使くんは持っていたアタッシュケースを開けた。
中身はだいたい予想がつくけれど、私の大好きな腕の動きを目で追った。
「おい女子高生、パンツ見えんぞ」
ふと上を見上げると、茶色の前髪をピンでとめた一重の男が。
「笑氏さんに見られるのは嫌」
「見えんぞ、って注意してんだよバカ」
笑氏さんは堕天使くんと違って所構わずタバコを吸う。
部屋の匂いの元は5割くらいこの人のせい。
せっかく消臭剤を買ってきてあげてるのに。
「そんなんじゃ、いつかテシに手ぇ出されるぞ」
「えっ!?」
テシというのは堕天使くんのこと。
この社会では本名は基本使わないようで、だけどテシというあだ名の由来は教えてくれなかった。
「堕天使くん、襲ってくれるの!?」
「襲わないよ」
至って同じトーンで、堕天使くんはアタッシュケースの中身を整理しながら淡々と答える。
「早く抱いてくれないと、私の女子高生生活終わっちゃう」
「そうだね」
綺麗に光を反射するナイフに堕天使くんの顔が映る。
全く相手にしてくれないから、もっと突っかかってみた。
「制服着られるのあと少しなんだよ?私、卒業したら頼まれても着ないよ?背徳感味わないと!」
「結構でーす」
けれど、やはり、面白いくらいに相手にされない。
先程と足を逆にモゾモゾして、堕天使くんの太ももに頭を押し付けては離した。
「もーーー!」
「邪魔」
「もーーー!!」
更に動きを早くすれば、髪の毛はボサボサになるし、堕天使くんの口からため息が漏れる。
「エミ」
「はいよ」
ややこしいけれど、エミというのも笑氏さんのこと。
あれだけパンツ気をつけろと言っていたくせに、笑氏さんは容赦なく私の足を引っ張る。
「やぁー!パンツ!」
「今更だ、よ!」
そのままズルズルとソファから引きずり下ろされて、そのまま部屋を出てしまった。
当然、スカートはめくれてるし、笑氏さんにパンツは丸見え。
堕天使くんはきっと見てくれてないだろうから、損でしかない。
「んじゃ、帰れ」
部屋の外につまみ出されれば、ひんやりとした風が私の太腿を撫でた。
「まだ明るいよ」
「俺達は仕事があんだよ。何回も言うけど、お前マジで邪魔」
何回も聞いたこの言葉。
だから、私も何回でも言う。
「堕天使くんの1番になりたいの」
「…はぁ、呆れた」
うんざりだ、と、笑氏さんの代弁をするその顔。
私の体を気持ちばかりに蹴って、笑氏さんは部屋に戻ってしまった。
(私と堕天使くんの仲を裂こうとするなんて)
堕天使くんとの間柄を何の言えばいいか分からないけど、将来の関係は決まっている。
彼氏と彼女。
そして、旦那さんと奥さん。
ドン引きされるような出会い方があっても、こうして関係が続いている。
せっかく神様がチャンスをくれたのだから、私は最後まで頑張らなくてはならない。