僕の特技は秘密です
「その女の子、『つーちゃん』と最後にあったのが小学校3年生の頃でさー。祖父母の家から自宅に戻ることが決まって、お別れの挨拶をしに神社にいったんだ。そしたらいなくてさー。それまでも毎回今日行った社務所で女の子を呼んでもらおうと巫女さんに声をかけてたんだけど、いつも、『今はここにいない』と言われる割には神社でうろうろしてるといつの間にか傍にいたんだ。だから今回もそんなもんだと思って、初めて会った椿の木の傍に行ったんだ。」

橘は相変わらずニヤニヤしながら話を聞いている。

「社務所の巫女さんたちには『いつも、つーちゃんいなくてごめんなさいね。』って言われてたのに、椿の木の前にいたんだよ。その日はやたらに彼女が大好きなお母さんとの思い出話をしてくれいていたんだけど、両親の中が悪かったから当時の僕はつーちゃんが羨ましかったのと、笑顔が可愛くて触りたくなったんだ…。」

本当のところ、頬にキスをしたかった。

「おまえ、小2で既にエロだったんだな…。」
「…否定はできない。でも手を伸ばした瞬間、雷が鳴ったと思ったら、つーちゃんがいなくなってたんだ。それっきり会えていないんだ。」
「幼いながらに身の危険を感じたんじゃねぇの?」
「その後も祖父母の家に行ったら時々神社に行ってたんだけど、巫女さんにつーちゃんのことを尋ねたら、僕が会っていたころは彼女は事故で入院していた時期だから、別の子じゃないかっていうんだよ。」
「うおぉ。まじかぁ。」
「そんで、祖母にあの神社に僕と同じ年くらいの女の子が住んでないか聞いたら、『椿ちゃん』のことかしら?っていうんだ。」
「椿だから『つーちゃん』か…。その事故でなくなって幽霊を見たってことはないのか??」
「昼間も話したけど、僕が見るのは動画を再生しているようなイメージだろ?彼女とは会話もしたし、一緒に遊んだりもしたんだ。祖母の話だとその事故で母親は亡くなったそうだが、彼女は無事退院したらしい。」
「…だから、幽霊ではないということか。」
「…そう思っている。」
「甘酸っぱいだけの思い出だけじゃないんだなー。明日、もう一度神社に行って『つーちゃん』が実在するのか確かめてみようぜ!なんか面白いことになってきた!」
そういうと橘は一気に残りのビールを飲みほした。
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