僕の特技は秘密です
「清さんは無事に戦争から戻ったらあなたと結婚するつもりだったそうです。」

『…戦争?あの人は体が弱いから召集はかからないはず…』

紅葉さんの霊らしきものが僕の話に反応する。きっと、『清さん』に反応しているのだろう。

「戦況は悪化し、清さんのところにも召集令状が届いたそうです。その時は紅葉さんの体調が悪くほとんど意識がなかったと聞いています。清さんはそのまま戦死され、紅葉さんも回復せず亡くなったそうです。楓さんはあの戦争がなければ二人は夫婦になっていたと嘆いていたそうです。」

『…楓。そうなの??』

と言いながら、紅葉さんの意思に取り憑かれた大吾くんがつーちゃんの方を見る。

そうか、楓さんのひ孫にあたるつーちゃんはとても良く似ていて、紅葉さんはつーちゃんのことを楓さんと思い込んでいるのか。

(…つーちゃん、楓さんのフリをして。そして、僕に話を合わせて)

僕のそばにいるつーちゃんにだけ聞こえる声で言うと、つーちゃんは黙って目で了解の合図をする。

「えぇ。その通りよ。清さんから戦地へ向かう話を聞いたとき、すでに紅葉姉さんほとんど意識が戻らなかった。だから伝えることができなかったの。」

「紅葉さん、僕は楓さんの恋人です。彼女のことは僕が必ず幸せにします。あなたは既に病気で亡くなっている…。こんなところにいないで天国の清さんのところへ行くべきです。」

「…楓と清さんは恋仲ではないの?」

「違います!彼女の想い人はこの僕です。」
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