僕の特技は秘密です
すると、大吾くんの中からピリピリとしたイメージだけがこちらに近づいてきた。
今までの経験ならピリピリしたものは常に特定の場所に固定されていて、それ自体は動くことはなかった。
しかし、紅葉さんのイメージはピリピリとしたそのものが意思を持っているかのように動き回れるようで、このように自由自在に動き回れるのならば、以前、いなくなったときのことが納得できた。

紅葉さんは大吾くんから離れ、楓さんと思っているつーちゃんのそばに来ると、彼女の頬をふれた。

「私が勘違いをしていたようね。楓、幸せになって。」

というと、綺麗サッパリ消えてしまった。

大吾くんから離れてしまった紅葉さんの姿は僕にしか見えていないようで、他のみなは何が起きているのか気がついていないようだった。

「紅葉さんが…。大吾くんから離れて、つーちゃんの頬を撫でながら『幸せになって。』って言って消えちゃった。」

「もういなくなってしまったってこと?」

「そうみたいだ…。」

「一条!まだこっちが残っているぞっ!」

大吾くんの周りにはまだ黒いモヤがまとわりついている。
紅葉さんがいなくなったとすると…。この黒いものは悪霊となった秋さんなのであろう。

「つーちゃん、悪霊をもう一度壺に閉じ込めよう。」

「旺介くん、どっどうしたらいい!?」

「一緒に見つけた帝からの刀だ!」

急いで桐の箱を開ける。
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