僕の特技は秘密です
気合いを入れる理由はもう一つある。
実は第一志望の大学が偶然にも旺介と橘さんと同じ大学だったのだ。
学年も学部も違うので一緒になることは少ないだろうが、今よりは会う機会が増えると思うとどうしても受かりたかった。

当然、ここから通うとなると通学が大変なので、同じ大学を志望しているもう1人の幼馴染の梨香子とルームシェアしようと計画している。

2人ともまだ試験も受けていないのに、カーテンの色はどーするだの、お揃いのマグカップをどーするだのルームシェアの話になると、とても盛り上がった。

『コンコン』

部屋のドアがなる。

「椿、ちょっといいか??」

「平気よ。」

お父さんが入ってきた。
『ちょっといいか』で始まるお父さんの話しは大抵良いものではない。また何かやらかしたのだろうか…。ほんっと、頼りないお父さんで困る。亡くなったお母さんは何でこんなポンコツと結婚したんだろう?って、時々思う事がある。この神社も宮司として名乗っているが、巫女の佐々木さんがいないと何もできないのだ。

「どうしたの?何かあった??」

「あぁ…。実はなぁ。お婆ちゃんが入所してる施設から連絡があってなぁ…。」

「えっ!?お婆ちゃんになにかあったの??」

「お婆ちゃんは元気なんだが…。来年の春にあの施設が閉鎖されることになったんだ。施設の閉鎖後、あの場所に村の商業施設を作る計画があるらしい。ちょっと前に介護施設の敷地内から温泉がでてなぁ〜。村長もそれを利用して人集めしたいって言ってたから、そういう事なのだろう。」

「えっ?じゃぁ、お婆ちゃんはどうなるの??」
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