僕の特技は秘密です
「じゃぁ、リンゴジュース。」

「かしこまりましたー!」

梨香子はオーダーを終えると元気にバックヤードに向かう。

「今日は来てくれてありがとう。」

オーダーしたものが来るまでの沈黙が嫌で、まずはお礼を言った。

「気にしないでいいよ。祖父母の家に届けるものもあったからついでだよ。」

旺介くんは優しく言ってくれた。
とても優しい口調なのに彼といると心が落ち着かない。何かに急かされているように心臓が早くなる。

「この後、一緒に校内を周れたりするの?」

「あ、うん。あと30分で交代なの。そしたら教室から出られる。」

「良かった。」

そう言って微笑んでいる旺介くんの笑顔はまさにアイドルのキメ顔のようにかっこよくキュンとする。

「お待たせしました~。ケーキとお飲み物です~。」

梨香子がケーキと飲み物をテーブルに置くと先ほどと同じアイドルのような顔で

「椿ちゃんの幼馴染の梨香子ちゃんだったよね?ありがとう。」

と微笑んだ。自分以外に優し顔をされたことに少し嫌な気持ちになる。

梨香子は顔を真っ赤にして大ちゃんのところに小走りで去っていくと、二人でこそこそと話をしていた。

「今日はつーちゃんって呼ばないんですね。」

「あぁ、、、呼びなれないけれど、子どもっぽい呼び方されるのって学校では嫌かなぁ~て思って。」

「そうだったんですね。なんか、距離を置かれたのかと思っちゃいました…。」

「ははっ、そんな心配いらないのに~」

「このケーキ、家庭科室を借りてみんなで作ったんです。お口に合うかどうか…。」

「そうなんだ!お店で売ってるみたいに綺麗にできたね。凄いや。」

ケーキを食べ終わると、私は当番に戻り、旺介くんはそのまま席に座り時間まで待っていてくれた。
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