僕の特技は秘密です
バックヤードに戻ると、クラスメイトから質問攻めにあったが大ちゃんが私の彼氏説を強く否定し、その脇で梨香子が、旺介くんの友達の橘さんもモデルみたいにかっこいいと話を広げていた。

…旺介くん、大学でもモテるんだろうな。

当番が終わると、校内を案内しながらゲームイベントに参加したり、タコ焼きやクレープなどの軽食を一緒に食べた。

迷子になるからって、ずっと手を繋いでくれているので、常に耳まで赤くなっていた。

きっと、旺介くんの中ではいつまでも私は幼い迷子のつーちゃんなのだと思い知る。

どうしたら女の子として見てもらえるのかしら…?
高校を卒業し、同じ大学に入ったら少しは見方を変えてくれるかしら…?

歩き回っている間、次第にそんな事を考えるようになっていた。

「あ、ごめん、電話鳴ってる。」

と言って、旺介くんは私の手を離し、上着のポケットからスマホを取り出し耳にあてた。

「もしもし?(みやび)?どうしたの?」

なんか、凄く優しい声。
電話の相手がすごく気になる…。雅って、女の子の名前を呼び捨てにできる関係なんだ…。

「…ちゃんと渡したから。わかった、会う時間作るから。じゃあね。」

と言うと電話を切った。
『会う時間作るから』って…。
そうか…、旺介くん、彼女いるのか…。

…やだ。なんか気分悪い。
これ、嫉妬だ…。

「ごめんね、次はどこに行く?」

俯いている私の顔を覗き込むように尋ねて、再び手を繋いだ。
旺介くんの表情は相変わらず優しい。

そんな、優しい顔をされては、今の『雅さん』からの電話がなければ、自分にも可能性があるんじゃないかって勘違いしてしまいそうになる。

一緒に帰宅できるなら自宅まで送ってくれると言ってくれたのだが、最後に教室に戻り点呼があるので学校でのお別れになった。

校門の所まで旺介くんを送りに行くと、なかなか繋いだ手を離してくれず、なんだか別れ難くなってしまう。

「受験が終わったらゆっくり会えるようになるって思っていい?」

「うん、大丈夫。」

「じゃあ、今日はこのまま帰るよ。楽しかった。」

「うん。今日はありがとう。」

別れの挨拶をしていると突然大ちゃんがやってきた。

「旺介さん、すみません、集合時間に遅れるので椿連れていきますね。」

「あぁ、うん。引き止めてしまったみたいでごめん。またね。」

「えっ、あ、うん。また…。」

大ちゃんは私の手を繋ぐかのように手を強くひき校門から下駄箱のある玄関まで引っ張っていくとようやく離してくれた。
< 78 / 102 >

この作品をシェア

pagetop