僕の特技は秘密です

押されたスイッチ

「橘ー、今度の土曜日、つーちゃんの学校で文化祭なんだって!どーしよ、行っちゃおうかな。行ったら引かれるかなぁ?」

可愛いつーちゃんを思い出し、ベッドで転がりながら、相変わらず僕の部屋で寛いでる橘に聞く。

「俺なら引くな」

と笑われた。

「もう遅い。今、行くってメッセージ返信ちゃった。」

「俺、今回はついていかねーぞ?」

「えー、一緒についてきてよー。」

あざとい女子っぽく上目遣いで橘を見る。

「お前、なんか最近キャラ違くねぇーかー?」

「あはは、気のせいだよ。」

「前はもっと陰キャなイメージだったけど、最近明るくなったな。」

「そーかぁ?」

橘は近頃頻繁に僕が明るくなったと言う。
自分ではあまり変化はないのだが…。

橘に断られたので、つーちゃんの学校の文化祭は1人で行くことになった。
母さんについでに祖父母の家にシンガポールのお土産を持って行く様に頼まれたので一緒に車に詰め込む。

実はあんなに喧嘩三昧だった両親は、その後再び仲良くなったので、僕には妹ができていた。
妹である(みやび)は動物好きな小学生で両親は雅に激甘なので動物園に行くためだけにシンガポールへ行っていたのだ。

雅は僕の女の子版といった所だろうか。
今では完全にただの女装になってしまう残念な僕とは違い、本物の女の子の雅は誘拐されてしまうんではないか?と思うほど可愛らしかった。僕のように何か他の人には見えないものが見えるといった薄気味悪いことも言わない。
両親が溺愛するのもよくわかる。
兄である僕ですら雅には弱い。
現在の一条家は雅中心と言っても過言ではなかった。

今回の荷物を届ける話も、雅が直ぐに祖父母にお土産を渡したいと言うので持って行くのだ。
母からの頼みだけだったら面倒だと断ったが、一条家のプリンセスからの頼みでは仕方がないのだ。
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