ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする

反撃開始

レトロ風の薄暗いカフェの一角で、秘書の木下と若葉が向かい合って座っている。
聞きなれないジャズが静かに流れていた。

「では、確認いたします。」

木下は若葉から渡された封筒から、婚姻届を取り出すと、
中を検めた。

「ん?これはどういうことですか?」

若葉は、佐野に言われた通りに、東京に来た秘書の木下に、
半分空白のままの婚姻届を渡したのだ。木下は、自分の上着のポケットから
ペンを抜き取ると、

「今、記入しください。」

と、若葉に差し出した。

若葉は、

「申し訳ありません。やはり有野社長とは結婚出来ません。」

と、頭を下げた。

「あなたが断れば、この話はお姉さんのところに行くだけですよ。」

「有野社長に頼まなくても、無償で融資をしてくれる方が見つかりました。
だから、うちの家族、旅館には二度と関わらないでください。」

「そんなうまい話があるわけないでしょう!失礼ですが、騙されているとしか
思えません!さあ、早く書いてください!」

と、木下がまくし立てるように言った。

「はじめまして。ベリーズソフトの佐野と申します。」

若葉の後ろの席から、佐野が立ち上がり、木下の目の前に名刺を差し出した。
木下は、佐野の名刺を受け取ると、自分の名刺も佐野に渡した。

「そういうことでしたら、一旦この件は持ち帰らせていただきます。
でも融資の件はストップしますから!」

と言って、木下は先に店を出た。
外に出た木下は、すぐに電話をかけていた。

「河合さん、よくできましたよ。」

「佐野さんのおかげです。ありがとうございます。」

「よし、じゃあ、次。付いて来て。」

「はい。」

と言って、若葉と佐野は、カフェを出た。
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