ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
若葉は、佐野に話した方が、東堂さんと別れやすくなるかもと思った。
そして、何より、婚姻届を返してもらわなければならない。

若葉は、実家の旅館のこと、両親のこと、姉のこと、負債額のこと、有野社長との結婚のこと、
木下が婚姻届を取りに来ることなど、包み隠さず、すべて話した。

佐野は、途中で口を挟んだりすることもなく、若葉の話を真剣に
最後まで聞いてくれた。

佐野はすべて聞き終えると、

「では、河合さんは、東堂を捨ててお金のある有野社長のところに行くということですね。」

と、言った。

「捨てるなんて!私だって本当は冬英さんと一緒にいたいです!でも私にはこうするしか方法が・・・。」

と、若葉は震える声で言った。すると佐野が、

「2週間、時間をください。婚姻届は、何も記入せずに、この状態のまま、
その木下という秘書に返して結婚は断ってください。そして、当面の負債は東堂が
肩代わりします。」

若葉はきょとんとした。

「何を・・・?到底払える額じゃありません!」

「いや、東堂なら余裕で払える額だから、そこは心配しないで。
そんなことより、東堂に助けてほしいって、一言言うだけでいいんだよ?」

「そんなこと・・・。東堂さんに迷惑はかけられません。」

「東堂は、きみから本当のことを言ってもらえるのを待ってるよ。」

「でも・・・。」

「あ~!もう!埒が明かない!」

と、佐野は言うと、スタスタと移動し、自分のデスクに置いてあるPCを、片手でくるりと回し、
若葉の方へ向けた。

「と言うことだそうだ。東堂どうする?」

PCの画面には、自宅にいる東堂が映っていた。若葉がここに来てからずっと、
オンラインでつないでいたのだ。画面の向こうの東堂が、

「若葉さん、事情は分かったから佐野の言った通りにして。この件はすべて佐野と僕に預けて
くれないか?」

若葉はぽろぽろと涙を流しながら、

「冬英さん、・・・助けてください。」

と、声を絞り出した。

佐野と東堂は、にっこりと笑った。
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