ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする
佐野に促されるまま付いて行くと、ベリーズソフトの本社ビルに
入って行った。

佐野の社長室に入ると、佐野は、

「じゃあ、ご実家に電話してくれるかな?」

と、佐野が言った。

「はい。姉でいいですか?」

「いいよ。それとビデオ通話にしておいて。」

「・・・はい。」

「負債の融資をしてくれるところが見つかったことを話して。それと、今借りてる銀行のリスト
すべて教えてもらって。」

「はい。」

若葉は、ソファに座ったまま、両手で携帯を持ち、自分の顔が映るようにして
電話をかけた。

プルルルル プルルルル プルルルル

コールしてもなかなか出ない。

「今は、そんな忙しい時間じゃないはずなんだけど。」

と若葉が言うと、20回ほどコールしたところで、姉の和葉が電話に出た。

「もしもし?え?なんでビデオ通話なの?」

姉がびっくりした表情で電話に出た。

「今忙しい?」

と、若葉が聞くと、

「違うの。銀行から次々に融資打ち切りの電話がかかってきて。1週間以内に返済しろって・・・。」

「大丈夫。お姉ちゃん、そのことで電話をしたの。」

「え?知ってたの?」

「うん。実はね、うちの旅館に無償で融資してくれるところが見つかったの。」

若葉がそう言うと、和葉はそんな馬鹿な話はないだろうと、いかにも怪訝そうな顔をした。

「若葉、どういうこと?」

と若葉が聞くと、

ひょこっと若葉の背後から、佐野が画面に顔を出した。

「こんにちは。ベリーズソフト代表取締役の佐野と申します。」

佐野の顔を見て、和葉は驚いた。
先日、旅館に宿泊してくれたお客様だ。
2人とも飛びぬけた容姿で、よく覚えていた。見間違うはずも忘れるはずもない。

「あなたは、先日お泊り頂いたお客様・・・。」

「はい。先日は大変お世話になりました。。」

「え?佐野さん、うちの旅館に泊まったんですか?」

若葉も驚いた。

「ああ、東堂と二人でね。」

「ええ??東堂さんと??」

若葉はさらに驚いた。驚く二人をよそに、佐野は、

「早速向こうも動き出したようですね。そういうわけで、銀行の融資がすべて止まったはずだから、こちらで
処理します。銀行のリスト、送ってくださいますか?」

「は、はい!すぐにお送りします。」

「はい。よろしくお願いします。あとはこちらで処理しますので、
通常通り、旅館の営業を続けてください。」

「はい!本当にありがとうございます!」
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