ゲームクリエーターはゲームも恋もクリアする

東堂と佐野

東堂のマンション

東堂は自宅で、PC3台に囲まれて作業をしていた。

ポコン
 
と音が鳴ると、東堂はすぐ音に反応し、携帯に手を伸ばした。
東堂は若葉からのメッセージを見ると、ポリポリと頭を指で掻いた。
ゲーミングチェアに座ったまま、くるりと向きを変え、

「佐野!若葉さんの企画、けっこう忙しい感じ?」

と、キッチンにいる佐野に向かって聞いた。

佐野はスーパーの袋から、飲み物や冷凍食品などを、冷蔵庫に入れながら、

「いや、普通に忙しいくらいかな。」

と、答えた。その答えに苛立ち、東堂は、

「普通に忙しいってどっちなんだよ。」

と、言うと、またその言い方が癪に障ったのか、佐野の方も、

「なんでそんなこと聞くんだよ。進行具合は報告してるだろ。」

と言って、佐野はバンっと勢いよく冷蔵庫を閉めた。

「いや、なんか若葉さん忙しいみたいだから。」

「ああ、身内が倒れたとかで、実家帰ってるらしいな。」

「え?そうなのか?」

「知らなかったのかよ。付き合ってるんだろ。」

「なんで俺には何にも言ってくれないんだろう・・・。」

「心配かけたくなかったんじゃないのか。」

「にしても、こういう事情なら言って欲しかったなあ。」

「知ってどうするんだよ。婚約者でもないのに、一緒に見舞いに行くのも
おかしいだろ。」

「いや、それが婚約者なんだよなあ。」

と、東堂がうれしそうに言った。

「え?もうプロポーズしたのか?」

「ああ。快諾してくれたよ。」

「まじか!よかったなあ!」

「ああ。」

「そうと分かれば、出前取るか。お祝いだ!」

「でも、いろいろ買ってきてくれたんじゃないのか?」

「これは、一人飯用だよ。」

佐野は冷蔵庫を再び開けると、

「ビールも足りないな。よし、ちょっと行ってくる!俺が
帰ってくるまでに仕事終わらせといてくれよ。」

と言って、上着を羽織った。東堂は、

「ああ。」

と言って、またPCに向かった。

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