愛しい君へ
翌日。俺の仕事終わりの時間を確認してきた薫が将史と手を繋いで、職員通用口の所で待っていた。

「お疲れ様。」

「将史〜。明日パパと飛行機乗るんだぞー」

「ヤダ!ヤダ!ひこうきいや!」

「え〜、オモチャやジュースもあるんだぞー」

「ジューチュッ? 行く!」

「よし!パパと行こうな」

「薫は引っ越しいつするんだよ」

「明日、貴方達がいない間にする予定よ。
さっき、由梨から連絡が来て、離婚届は提出完了したそうよ。」

「あっそ! 今までありがとう。そして薫を傷つけるような事して悪かった。ゴメン」

「うん。私は消えるから直史は幸せになってね。今まで本当にありがとうございました。お元気で…
あ、将史の衣類やオモチャなんか全部ダンボールに詰めてあるし、とりあえず3日間くらいの着替えとかオムツはスーツケースに入れておいたから…」

「じゃあ、将史の荷物はそのまま北海道へ送れば大丈夫なんだな?」

「うん。オムツも多めに入れてあるし…」

「あと、お前は慰謝料以外の金あるのか?」

「え? 無いけど何とかなると思う…」

「俺さ、本当に渡辺さんとはキッパリ別れたんだぞ。それでも薫は離婚するのか?」

「うん。もう直史を信じられないから…
直史もこれからは身体に気をつけてお仕事してね!」と言って病院の入口へ周りタクシーに乗るので俺と将史に手を振って行ってしまった。

薫…元々スレンダーだったけど、今日はガリガリになっていたなぁ…
俺が苦労かけたからかなあ…本当にゴメン薫。

「将史。パパとご飯食べて〜お風呂に入ろうな!」

は〜いと手を挙げてお返事する可愛い我が子だった。

その様子を建物の影から覗いていた薫はポロポロと涙を流し2人が見えなくなるまで見つめていた。
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