恋の♡魔法のチョコレート
家庭科室を出て向かった。

これでやっと向き合える。

()えなかった想いを伝えるために、オージ先輩のもとへ。

きっとまだ部活は始まってないからその前に呼び止めて、気持ちを伝えよう。

一応今日のためにダンス部の部活スケジュールを調べて来た。

今日は体育館の半面を使ってるって聞いたから…このまま下駄箱の前を通っていけばいいか!

なんて()おうかは散々考えたし、あとは言葉にするだけ、ドキドキする胸を押さえながら廊下を走る。

あと少しで…!

「ん?」

下駄箱の前を通り抜けようとすると見覚えのある姿があった。

俯いて顔は見えなかったけど、それは知ってる姿。

いつもよく見てるから。

「咲希?」

思わず足を止めた。

名前を呼んだ私を見る咲希の瞳からぽろぽろと涙が溢れていたから。

「咲希…っ、どうしたの!?何かあったの!?」

駆け寄って肩を掴んだ。
両手で顔を覆いながら涙を流す咲希はふるふると震えて弱々しく感じた。

「…何があったの?」

静かに、震える声で話し出す。

か細くて、今にも消えそうな声だった。

「…もうダメかもしれないの、光介と」

「え、なんで!?だってこないだ試合の話聞いたり、一緒に帰ってたり、いい感じだったじゃん!?」

「嘘だったの!」

「え…」

必死に涙を拭いながら、それでも止まらない涙をこらえきれず流し続けていた。

「本当は詩乃が一緒に待っててくれたあの日…、距離を置きたいって言われてたの。でも、納得出来なくて…部活が終わる待ち伏せをしてもっと話そうと思ってた」

「……。」

「でも…、怖くて!言えなかった…、結局待つだけ待って1人で帰ったんだ…」

薄々おかしいなとは思っていた。

でも聞いていいかわからなかった。

いつも咲希はしあわせそうで、私の憧れだったから。

「そしたら…どんどん距離が出来ちゃって、もう話すことも出来なくて。わかってたんだけどね、…最近ずっと近部活忙しそうで大変だってことぐらい。わかってたんだけど…っ、なのに感情的になっちゃって…そりゃ嫌われるよね」

無理に笑って見せる咲希に、何て言えばいいのか。

やっぱり私には何も言えなくて。

「ごめんね」

「え…」

「詩乃にも言えなかったの、言ったら本当のことになっちゃうみたいで」

そんな風に思ってたんだ、気付かなかった…。

話だけは聞けるって思てったのに、それもさせてあげられなかかったんだね。

今日だって1人で帰るつもりだったんだ、全部抱えて1人で。

「咲希…」

「ごめん!こんな話!詩乃はこれからオージ先輩のとこと行くんでしょっ、…詩乃は大丈夫だよ」

きゅっと私の手を握って笑った。

私は何もできなかったのに。

今、きっと笑いたくない…よね。

笑えないよね、私のこと応援してくれようと無理に笑ってくれてるんだよね。

私は咲希に何かしてあげられたかな。

してあげられるとしたら、なんだろう。
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