恋の♡魔法のチョコレート
「咲希…このチョコレートあげる!」

「え、だってそれは…っ」

「まだ言いたいこと言えてないんでしょ?」

何もできないけど何もできないなりに、咲希の背中を押したくて。
小鳩にもらったチョコレートをぐっと咲希の前に差し出した。

「これ小鳩が作ってくれたチョコレートなの!」

「知ってるよっ、でもそれは詩乃がオージ先輩に告白するためにもらったものでしょ!?すっごい苦労してっ!」

本当ならそうだった。

やっと()うことができると決意したチョコレートだった。

でもね…

「告白が上手くいくってジンクスがあるんだけど、きっと咲希の恋も応援してくれると思うよ!」

私だって応援したいんだよ。

「だってこれは魔法のチョコレートだから!」

“詩乃のそーゆう一生懸命なとこ、私は好きだよ”

あんなバカげたこと、真剣に聞いてくれるの咲希だけだから。

咲希と光介くんに何かあったら全力で応援するって、あの時言ったでしょ?

「もう一度、がんばってみなよ!」

咲希の手を取ってラッピングされたチョコレートを手渡した。
ぐっと咲希の手を握るように、しっかりと重ねて。

「大丈夫、まだ間に合うよ」

「でもっ」

気持ちを伝えるのはすごく怖い。

その気持ちはよくわかるよ。

それは、私にもわかるから。

「ちゃんと自分の言いたいこと言ってきなよ」

小鳩はこのチョコレートに何の効果もないって言っていたけど、恋する私たちにはどんなものでも信じたくなっちゃうんだ。

少しでも恋が実りますようにって、願いたくなっちゃうの。

「詩乃…っ、本当にいいの?」

「うん!小鳩の作ったチョコレートは効果絶大だからね!たぶん!」

「なにそれっ」

ふって声が漏れた。

咲希が笑ったから。

「…がんばって」

「ありがとう、詩乃」

トンっと咲希の背中を押した。

駆けてゆく後ろ姿に小さくガッツポーズをした。

心の中で、もう一度がんばってと唱えて。
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