結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
「おしろ?」

「いいや、マンションっていう、ちょっといいお家だ」

リビングに足を踏み入れ、杏花はさらにびっくり。一面にとられた窓に美しい夜景が広がっている。私でさえ息を呑んだ。

「きらきら! おひめしゃまのおうち!」

杏花は部屋中を駆け回り、ソファの上でぽよんぽよんと飛び跳ねる。

「こら、杏花! おうちの中で走っちゃだめでしょう?」

「テーブルに頭をぶつけないように、気をつけるんだぞ?」

まだ夕食を食べてない私たちのために、理仁さんはレストランディナーをデリバリーしてくれた。

豪勢な食事が家の外から運ばれてきたことに、杏花は驚愕する。

「パパ、おうじしゃま?」

「王子様? どうしてだ?」

「ごちそう」

「王子様じゃなくても、ご馳走は食べていいんだ」

杏花はいつも以上の食欲でお子さまランチをたいらげる。

「すみません、理仁さん。ドアが直るまで、ご厄介になります」

私があらたまると、理仁さんは困惑したように眉を下げた。

「ドアが直るまでとは言わず、ずっといてくれてかまわないんだが」

「え……?」

理仁さんの言葉に、私はフォークを持つ手を止める。

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