悪役令嬢の姉に転生した枯れ専女子はイケおじにしか興味がない!〜あと三十年経ってから出直してきなッ!!!〜

二章 シュルベルツ国王編

(シュルベルツ国王side)


六年前ーーー

此方から申し込むような形でヴィクトリアとジェイコブの縁談を提案した。
前王妃のリリアンは宝を三人も残してくれたが、ジェイコブを産んで直ぐに亡くなってしまった。
王位を継いで忙しくしていた為、随分と苦労を掛けてしまった。
それに気づいたのも、リリアンが亡くなった後だった。

彼女は弱音一つ吐くことなく、顔色一つ変えずに淡々と仕事をこなしていた。
だからこそ、そんな彼女に甘えてしまったのだ。
侍女達から話を聞くたびに自分を責めた。

何故、彼女にもっと寄り添えなかったのか。
気付いてあげられなかったのか、と。
結局、疲労や体調不良、出産と負担を掛け続けた体は耐えきれなくなり壊れてしまった。

(僕のせいだ……!彼女をもっと大切に出来ていたら)

リリアンの手を握りながら謝っていると、彼女は最後まで気丈に振る舞っていた。
『国王として、父として……立派に導いてくださいね』
そう言われて涙が溢れた。
死ぬ間際、声には出なかったけど彼女はこう言った。

『私を忘れて、幸せになって……』

最期まで彼女の優しさに救われたような気がした。

葬儀の時、鮮やかな花に囲われているリリアンを見て、涙が溢れそうになるのを堪えていた。
乳母に抱えられて寝ているジェイコブと、泣き噦るイライジャ、そして涙を流さずに毅然と立っているラクレットを見て、気を引き締めるような思いだった。

『僕はこの子達の為に何が出来るだろうか』
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