愛されることに 慣れていなくて
「美味しい」

「そうか、よかった」

「でも、菜々子みたいに上手く淹れることができない」

「そんなことないです。私が淹れるより凄く美味しい」

「そうか?」

「はい、ホントに美味しいです」

私がカップをリビングテーブルに置くや否や、彼の唇が優しく重なった。

「菜々子、愛してる」

「私もです」

「私もなんだ?」

「え?」

「私も、の次は?」

「あ、愛してます」

再び彼が唇を重ねる。

愛の言葉を声にするなんて、なんだかくすぐったい。

「そうだ、菜々子、年が明けてからなんだが、花の創業25周年なんだ。一緒に祝いに行こうな」

「はい、是非行きたいです」

「楽しみだな」

「隼人さん、大将と花さんがお店で写ってる写真はないですか?」

「写真?」

「はい」

「ちょっと待てよ」

彼がスマホを操作する。

「あ、あった。かなり前のものだけど」

そこには暖簾の前に笑顔で並んで立っている二人が写っていた。

隼人さん、これ、私に転送してもらえませんか?

「それは構わないが、どうしてだ?」

「私、お二人の絵を描こうと思います。プレゼントしたくて」

「それはいい考えだ。二人も喜ぶ」

「そうですか?」

「ああ、絶対に喜ぶ」

彼は私を優しく抱きしめてくれた。

「菜々子、絶対にいなくなるなよ。絶対にここから出ていくなよ」

「はい、隼人さんから出て行けと言われない限り、私は出て行ったりしません」

抱きしめる彼の手に力が入っていくのが伝わってきた。
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