愛されることに 慣れていなくて
しばらくすると、緊迫したオーラを放ち、眼光の鋭い上背のある男性がこちらへ向かって歩いて来た。
彼が社長であることは一目瞭然だ。テレビや雑誌でも見たことがある。

私は立ち上がり頭を下げた。

「待たせて申し訳ありません。久我山ホールディングス、社長の久我山です」

名刺を手渡された。

「はじめまして、日向菜々子と申します」

再度頭を下げる。

「どうぞお座りください。何か飲み物は?」

「いいえ、結構です」

「私にはコーヒをくれないか」

かしこまりましたとウエイターが奥へ下がる。

「お忙しいところ、突然申し訳ありません」

「いいえ」

丁寧な口調だけれど、どこか圧を感じてしまう。




「では、単刀直入にお伺いします。久我山家の嫁として、仕事を辞め、息子を支える覚悟はありますか?」

「はい?」

「息子は久我山グループを背負っていく立場にあります。息子には多くのものが求められる。その分、嫁としての貴女の仕事も多くを求められます。時には同伴し、取引先の相手をしなければならない。ご存知の通り、弊社は世界を相手に事業を展開しています。教養の他、語学力も必要となってくる。息子と結婚するということは、久我山の嫁になるということです。幼稚園の先生をしているそうですね。素晴らしいお仕事だ。ですが、先生をやりながら息子の嫁は務まりません。大変申し上げにくいのですが、貴女が警察沙汰になった人物と同棲していたことを調べさせいただきました」

警察沙汰?この人は何を言っているのだろうか…

「そのような人物と関係のあった女性を息子と一緒にさせるわけにはいかないのです」


一方的に捲し立てられ、自分を見失いそうになった。
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