愛されることに 慣れていなくて
真太郎が立ち去ると、気が緩んでしまい、急激に身体が震え出した。足の力が抜け、その場に崩れ落ちそうになった。

男性は咄嗟に私の腕を掴み、体ごと支えてくれた。

「す、すみません」

体勢を整えようとする私の斜め上から

「契約違反だな」

低い声が降りてきた。

「ここは単身者専用のはずだ」

私はハッとして、今度は身体が硬直してしまった。

「すみません」

確かにこのアパートは単身者専用だ。契約書にもそう書いてある。けれど私は同棲していた。この歳になって、しかも幼稚園教諭という立場にありながら契約違反をしてしまうなんて、本当に情けなくて恥ずかしい。

「本当にすみません…」

「契約は解除だな」

「え⁉︎ちょ、ちょっと待ってください!ここは出ていきます。今部屋も探してもらっています。お願いですからもう少しだけ待ってもらえませんか?」

私は慌てて深く頭を下げた。

頭を下げている間、ふと不思議に思った。
見ず知らずのこの人は、何故私が同棲していることを知っているのだろうか?
このアパートの契約形態を知っているということは、不動産関係の人なのだろうけれど、それにしてもいきなり契約解除と言い出すなんて強引すぎるような気もする…

「無理だ」

彼の言葉は私の思いを一蹴した。

「そんな…」

全て自分が蒔いた種だ。身から出た錆。
私は項垂れた。
同時に彼の微かな溜息も聞こえた。
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