愛されることに 慣れていなくて
俺はそっと近づいた。

遠くを見つめたまま、微動だにしない。

彼女はすぐそこに居るのに、とても遠くにいるように感じた。


「菜々子」

返事がないので、もう一度名前を呼んだ。
すると、ようやく彼女の視線が動いた。
ゆっくりと俺の方を向く。

「隼人さん、どうしたんですか?」

顔色は悪く、目もうつろで、表情がない。

「菜々子、こんなところで何をしているんだ?寒いだろ、家に帰ろうか」

「家、ですか…… 帰らなければいけませんか?」

「ここにいたら風邪をひくだろう」

「全然寒くないですよ」

「帰りたくないのか?」

「……」

彼女は何も言わず、また遠くを見つめた。


俺の目の前にいる彼女は、まるで別人のようだった。
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