愛されることに 慣れていなくて
俺は眠っている彼女の手を握った。

「ごめんな、菜々子」


時計の針は彼女が目を覚さないまま時を刻んでいく。

18時、きっと外は真っ暗だろう。

トントンと、ノックされ、ドアがゆっくりと開いた。
すると、スルスルッとドアをくぐり抜け、小さな女の子がベッドに駆け寄った。


「菜々子せんせ〜」

「もも!」

母親だろうか「突然すみません」と申し訳なさそうに頭を下げた。

「いいえ、どうぞ」

俺は彼女に部屋に入るように促した。

「失礼します」遠慮がちに下を向きながら入ってきた彼女が顔を上げた瞬間、目を見開き「王子」と手で口元を抑えた。

「え?」

「ほ、本部長ですよね?久我山本部長ですよね」

「はい、そうですが」

「その節はありがとうございました」と突然深く頭を下げた。

「私は横浜支店の風間です」

俺はすぐに理解した。支店長に理不尽に辞めさせられた社員だと。

「私の方こそ、辛い思いをさせて申し訳ありませんでした。風間さんの評判は本社にも上がってきています。どうか、これからもよろしくお願いします」

「はい、頑張ります」

風間さんと話をしていると、スーツの袖口を引っ張られた。
目をやると女の子がスーツの袖口を摘んでいる。
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