愛されることに 慣れていなくて
倒れた日の1日だけ点滴を受け、私は彼の運転する車でマンションに戻って来た。

居るだけで苦しかった部屋が、今はむしろ落ち着くくらいだ。

リビングの窓から景色を眺めていると、後ろからこちらに歩いてくる隼人さんが窓ガラスに映った。

ガラスに映る私と彼の身体が重なり、
彼は私の後ろからそっと腕を回した。

私はこの人に愛されている。私もこの人を愛している。

「隼人さん」

「ん?」

「お願いがあります」

「何?」

「私と結婚してくれませんか」

思わず出た正直な気持ちだった。


彼は目を丸くする。

私の身体を反転させ、私の頬を両手で優しく包む。

「菜々子、それは反則だ」

「反則?」

「俺より先に言うなんて、反則だろ」

「ダメですか?」

「ダメじゃない。答えはYES。YES意外に何がある」

「でも私は、久我山家の嫁としては何も出来ないし、相応しくないのかもしれません。それでもいいんですか?」

「もちろんだ。だがな、菜々子、何もできない、相応しくないというのは間違ってる。菜々子は菜々子だ。俺に無いものをたくさん持っているし、それに何より、菜々子は俺の原動力だ。原動力がなければ、久我山の跡取りだろうがなんだろうが何も出来ない。違うか?だから、自分を卑下するのはやめろ。俺が愛しているのは、日向菜々子、そのままの君だ」


「よかった」

私が微笑むと、彼も微笑み、私を抱きしめた。
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