愛されることに 慣れていなくて
俺たちを乗せたリムジンは、都内のフレンチレストランへとやって来た。


「隼人さん、ここで食事をするんですか?」

「ああ、そうだ」

彼女が不安そうな面持ちで俺の手を握りしめる。

「どうした?」と訊くと、食事の仕方がわかないと内緒話をするように言った。たくさん並べられたナイフやフォークを、外側から使っていくのだけは知っているが、どうやって食べれば良いのかと。

「お店に入ったら、まずどうすればいいですか?」

「席に着くまで俺から離れるな。いいか、菜々子、まず、黒服が椅子を引き、菜々子を座らせる。菜々子は何もせず、自然に座ればいい」

「隼人さん、私、その自然がわかりません。どうすればいいでしょう」

「俺の顔をみろ。俺が座るタイミングを合図する」

「できるでしょうか」

「できる」

「ちょっとやってみるか?」

彼女は頷いた。

俺の顔を真剣に見つめ、俺の合図を待つ彼女が可愛すぎて思わず顔が緩む。

「隼人さん、笑わないでください!私は真剣なんです!」

怒った顔も爆発的な可愛さだ。

「ごめんごめん」と返す。

「どうして早く言ってくれなかったんですか!教えてくれてたら、動画検索して練習したのに」

「教えたらサプライズにならないだろう」

頬を膨らませる。


俺が少し顎を引くと、少しだけ膝を曲げた。

「そうだ、それでいい。心配するな、俺がついている」

重厚な扉が開かれ、俺たちは店内へと足を踏み入れた。


はじめこそ、彼女はとても緊張していたようだったが、座り方が上手くいったようで、強張っていた表情も段々ほぐてれいったようだった。





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