愛されることに 慣れていなくて
彼は私の目を見つめ、ゆっくりと話し始めた。

「俺の両親は所謂政略結婚ってやっだ。母は半導体メーカーの一人娘だった。メーカーは高度な技術だったんだが、製造には莫大なコストが必要だったんだ。久我山の傘下に入ることで、その費用を久我山が持つことになった。だが、久我山からいつ見放されるかわからない。それで母を親父に嫁がせることにしたんだ。嫁いだものの、親父の気持ちが自分にないことを結婚当初から気づいていた母の心は段々病んでいった。追い打ちをかけるように癌も見つかった。そしてとうとう母の心は限界を超えた。睡眠薬を服用し自ら命を絶ったんだ。
嫁が、妻が、自殺となれば会社にとって大打撃だ。
倒れた母は誰にも気づかれないように、親父の息のかかった病院に運ばれた。そして息を引き取った。死因は病死。
俺はその時4歳だった。話しかけても返してくれない母が、もう二度と目を覚さないことを悟った。
ふらふらと病室を出て、自分がどこにいるのかわからなくなった。優しかった母はもういない。迷った俺を迎えに来てはくれない。とてつもない不安に襲われて俺は泣いた。どれくらい泣いていたのかわからない。
そんな時、天使が舞い降りた。
俺の前に優しく微笑む天使が座っていた。そして俺の涙を拭ってくれた。歌いながら絵を描いてくれたんだ」
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