愛されることに 慣れていなくて
「おはようございます。菜々子先生、その大量の荷物は何ですか?もう発表会の準備ですか?」

同僚の先生が声をかけてきた。

「そ、そうです。そろそろ取りかかろうかと思って」

「私も準備しなきゃなぁ」

今朝チェックアウトする際に、この荷物を駅のロッカーに預けて出勤しようと思ったのだけれど、貴重品もあるので預けるのを躊躇い、結局幼稚園まで持ってきてしまっていた。

何も詮索されずに一日が終わることを願っている。


子供たちが登園する時間になり、私は教室の前で子供たちを待つ。

親御さんに連れられやって来た子供たち一人一人が私の姿を見つけると、満面の笑みで私の方に駆け寄ってくる。

「ななこせんせー、おはよ〜」

私はそんな子供たちをギュッと抱きしめ
「おはよう」としっかり表情を確認する。
その子の微かな変化も見逃さないように。

みんな今日も変わりなく元気そうだ。
何かを抱えているのは、どうやら私だけだな。


登園直後やお迎えの時間の前には、子供たちは園庭で自由に遊ぶ。そしてその時間には必ずと言ってよいほど大なり小なり諍いが起こる。そして今日もそれは起きた。


「ななこせんせー、ケンちゃんとトアくんがけんかしてる〜」

私は一部始終を見ていたのでわかっているのだが、数人の子供たちが報告に来てくれた。

そして何故喧嘩になったのかを、身振り手振り一生懸命説明してくれるのだ。たまに大袈裟になってしまうこともあるけれど、順を追ってしっかりと説明してくれる姿はとても頼もしい。
< 29 / 185 >

この作品をシェア

pagetop