愛されることに 慣れていなくて
『日向菜々子、君を好きになった』
彼の言葉を信じても良いのだろうか?

自問自答を繰り返す。
結局答えは出ず、時間ばかりが過ぎていった。

大変だ!遅刻してしまう。

大急ぎで身支度をしマンションを出た。


「菜々子先生、大丈夫ですか?」

年中組の先生から声をかけられた。
きっと目の下のクマのことだろうと思ったら、案の定そうだった。

「夜更かしをしてしまって」

「ダメですよ!夜更かしは天敵です。私たち35を過ぎた女には特に。そのクマ、いつまで残るかわかりませんからね」

「ごもっともです」

「でも、私もついついやってしまうんですよねぇ。最近ビールより焼酎の方が美味しくなっちゃって、飲みながら落語のDVD見てたら12時回ってるんです」

「それ、わかります」

「でしょーっ!菜々子先生ならわかってくれると思った」

そうなのだ。35才を過ぎた先生達の話題から、いつの間にか恋愛に関することが消えた。最近はお酒の話と趣味の話で盛り上がっている。先日は熱燗の温度のことで討論を重ねていた。ちなみに私は芋焼酎5:5派だ。

同じ年代の同僚は愛とか恋とかでドキドキすることもなくなったと吐露していた。

確かに私もそうだ。真太郎と出会った時はもうドキドキすることもなくなっていた。なんとなくという言葉が当てはまる。

けれど、御曹司と出会ってからドキドキしっぱなしだ。いや、ドキドキどころではない。胸が苦しい。こんな気持ちになったことが今までにあっただろうか……


そろそろ園児が登園する時間だ。

子供たちを抱きしめ「おはよう」と、私の日常が始まった。
やはり私は、この場所が一番自分らしくいられる。

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