愛されることに 慣れていなくて
密着した状態から身体が離れるのと同時に、頭にのぼってしまった血液が、一気に身体中を巡り始めたようだった。満遍なく血液が行き渡ったところで、私は重要なことに気がついた。

すっぴんだ! まだクマものこっているし、とんでもない顔を晒してしまった。

これ以上この顔を晒すわけにはいかない。
慌てて部屋に戻ろうとしたところで、自室から出て来た彼に声をかけられた。

「寝るのか?」

「はい、こんな時間ですし、先に休ませてもらいます」

「そうか、すまなかったな。今日も睡眠時間を削らせてしまった」

「謝らないでください。貴方様のせいではございませんので」

「菜々子」

「はい?」

「頼むからやめてくれ」

「え?」

「その呼び方と俺を見ようとしないことだ」

「あっ、すみません。それではおやすみなさい。明日も6時に朝食準備しておきますので」

私は彼の顔をチラッと見て軽く会釈をしてからそそくさと部屋に戻った。

参った。あの腹斜筋と妖艶な香りが頭から離れない。今日も眠れないかもしれないな。
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