愛されることに 慣れていなくて
「こんばんは、お邪魔します」と会釈をする。

「いらっしゃい、あらまぁ、なんて可愛らしい人なんでしょう」

着物を着た女将さんらしき女性が微笑みをこちらに向けていた。

可愛らしい?私のこと?

「さあさあ、早くこっちへいらっしゃい」

コの字型のカウンター席と、4つのテーブル席があり、和モダンな柔らかなライトが店内を照らしている。とても温かみのある店だ。
カウンター奥の3席以外は全て埋まっている。

女性は私たちをそのカウンター席に案内してくれた。
羽織っていた上着を脱ぐと、彼女はさっと私の手から受け取り、ハンガーに掛けてくれた。その動作がしなやかで美しい。

「こんばんは」

カウンターの中にいる職人さんにも軽く会釈をした。

「いらっしゃい」

垂れた目尻が優しさを醸し出している。

「菜々子、紹介するよ。大将の正和(まさかず)さん、奥さんで、母の幼馴染の花(はな)さんだ」

「初めまして、日向菜々子と申します。よろしくお願いします」

「菜々子ちゃん、本当に可愛らしいわ。お人形さんみたい」

「だろ」

だろって、この人は何を言っているのだろうか。

「菜々子、座ろうか」

彼が椅子を引いてくれた。
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