謎多き旦那様の嘘、または秘密
きゃははは、と甲高い笑い声が頭に響く。
「馬鹿じゃないの、一般人やっちゃってさ」
目が正常だったのは幸いだった。
薬品の中身が何だったのかは容易に想像出来たが、僕ほどに働く人間も居ないのだろう。始末されることは無かった。
肌が焼けるくらいなら何も問題は無かった、はずだった。
「それで何、あの狐は」
「怖がらせないように」
「いや、十分怖いでしょ。家の中に仮面人間が居たら」
闇医者は煙草の煙を吐きながら言った。
服に匂いがつくのが嫌で、風上に立つ。
「それより、彼女はどうだ」
「身体は来たときよりも良くなってる。問題は心の方。でも変に信頼関係築いてから言うより、ちゃちゃっと言った方がお互い楽なんじゃない?」
血塗れの彼女を闇医者に診せたのは僕だった。
それからは訪問医として家に来ている。
「一回壊れた人間は、ずっと壊れやすいからね。手放すならいつでも言ってよ」
にや、と笑いながらこちらを見る。
渡したら最後、実験にでも使われるのだろうか、知らないが絶対に言うわけがない。
「手放す時は僕がやる。それで僕も死ぬ」
「愛が重いんだよなあ」
きゃははは、と笑い声が響いた。
謎多き旦那様の嘘、または秘密
終わり