謎多き旦那様の嘘、または秘密
「じゃあ、あなたは私の旦那様なんですね」
卵粥は美味しかった。旦那様は料理が得意なのかもしれない。
「そのお面は趣味ですか?」
「趣味で被っている」
「素敵なお面」
狐面を見つめる。その奥の瞳の色が見えた気がしたけれど、ふいと逸らされた。
「足が治るまで出歩かないように」
「旦那様の名前は?」
「特に無い」
「え?」
「特に無し」
トクニナシ、という名前ではないはずだ。
「怒ってるんですか?」
「何故」
「私があなたのことを、思い出せないから」
真っ白な記憶の中を探っても、何も見つからない。