野良狼と野良少女
「…っ、すいません壮馬さん。一旦電話切ります」
『了解、ごめんね。ゆっくり休んで』
不通音が聞こえたスマホは脱力した私の手から落っこちた。
そして私の体は再びベッドに沈む。
目から大量にこぼれる涙は幸いベッドが吸収してくれた。
ピンポーン…ピンポーン……
インターホンが鳴ってる。
もしかして、一ノ瀬くんだろうか。
でも今の私に一ノ瀬くんと会えるの?
髪はぐちゃぐちゃ、顔もどすっぴん寝起き。
それに何より…泣きはらした目、黒い感情。
そして何よりも、今一ノ瀬くんを前にしたら感情が爆発してしまいそう。
浮気してるの?
私の事好きじゃなくなっちゃった?
エミリさんはなんなの?
なんて質問をぶつけて、一ノ瀬くんを困らせてしまうだろう。
だから、出る気はなかったのに…