野良狼と野良少女
ブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ……
インターホンの代わりに鳴り続けるスマホに腕を伸ばした。
帰ってください、それだけ言おうと思って。
「もしも」
『羅奈!…なんで学校来なかった。体調でも悪い?二日酔い?LIME既読ついたのに返信こないし、電話も…』
マシンガンのように質問攻めされて圧倒される。
心の底から焦ったような声が答えだった。
ほら、やっぱり一ノ瀬くんは一ノ瀬くんだよ。
浮気なんかするわけない。
あのクールな一ノ瀬くんがこんなにもあせってくれてるのに、何が私の事好きじゃなくなっちゃった?だ。
さっきまでの私が、全部全部アホらしい。
涙で声が出なくて、代わりにオートロックを解除した。
そして玄関にいって鍵を開けて、そのままへたり込む。
少しでも一ノ瀬くんを疑ってしまった自分の浅はかさと安心で涙が止まらなかった。
ガチャ
「羅奈……っ、は?」
ドアが開いて、少し息を切らした一ノ瀬くんが現れる。
そして大泣きで崩れ落ちた私を凝視する。
ああ、一ノ瀬くんだ。
来てくれたんだ。