野良狼と野良少女
「…壮馬さんが言っためちゃくちゃなことを信じてたのは許してないけど」
「だって…!ほぼ毎日バイトって一緒にいれなくなって、他の女の子と彼女って噂が出るほど仲良くしてるのかなって思ったら…不安で」
言葉にするとやっぱり一緒に涙が出てしまって、上手く言えなかった。
「…ごめん、やっぱ寂しかった?」
「私の事、好きじゃなくなっちゃったのかと思った…!」
「なわけないだろ。昨日の夜嫌いって言われそうになった時本気で焦った。今の俺は羅奈なしじゃ生きていけないくらい重症だよ」
抱きしめられたままぽんぽんと頭をなでられる
子供みたいだけど、安心してしまう自分がいるんだ
「来週からあの店、太郎と新人3人入るらしいから。もうシフト減らす。つーかバイト自体やめるわ」
「そんな……私がわがままなだけだから、そこまでしないでもっ」
「いや、ありだな。この連勤期間だけでもだいぶ稼いだし。エミリに付きまとわれるのもいい加減懲りた」
あいつにもキツく言っとかないとな、なんて一ノ瀬くんは深いため息をついた。
私のこと、好きじゃなくなったわけじゃなかった。
そう思えるだけで不安というものはどんどん溶けて消えていく。
ただ幸せなだけの時間が流れているのを肌で感じていた。